「そんなの理想論」を跳ね返す、三島由紀夫の恋 『ヒタメン 三島由紀夫が女に逢う時・・・』
三島由紀夫伝説の、舞台裏
日本文学で一番すきな作家は三島由紀夫です。文章の神経質さとか、思想の潔癖さがなんだかしっくりきます。
三島由紀夫といえば、美と影!本人も旧華族みたいな家で煌びやかな物に囲まれつつ、礼儀と世間体にがんじがらめにされて育ってそうなキャラクターです。
わたしもそんな三島像がすきでたまらない一人ですが、この本はそんな彼の姿がかつての恋人・・・元カノから覆されます!
三島 由紀夫(みしま ゆきお、本名:平岡 公威(ひらおか きみたけ)、1925年(大正14年)1月14日 - 1970年(昭和45年)11月25日)は、日本の小説家・劇作家・随筆家・評論家・政治活動家・皇国主義者。(中略)1970年(昭和45年)11月25日、楯の会隊員4名と共に自衛隊市ヶ谷駐屯地(現・防衛省本省)を訪れ東部方面総監を監禁。バルコニーでクーデターを促す演説をした後、割腹自殺を遂げた。
作者は、大河『真田丸』にも出演した岩下尚史氏!
スパイラル芸能の宴2013『花方』岩下尚史 × 小林裕幸 特別対談①
いけずを体現するような語り口で、タレントとしても活躍中の岩下尚史さん。『5時に夢中!』や、ラジオでの下ネタ大爆発なところもいいのですが、文章もめちゃくちゃ素敵なんです。
日本人の感性を騒がせる描写にあふれた芳醇な文章なので、一読の価値あり。古い作品と違って読んでて疲れないのも魅力です。
・・・うん、こんな安っぽい日本語で紹介してしまってすいません。
明智役の岩下尚史さんが三島由紀夫の恋人・親友であったふたりの女性にインタビューした『ヒタメン』、とても面白いですぞ(突然のダイマ)https://t.co/oiwD8Le8Jh
— チサパン (@chisapanda) 2016, 1月 31
三島由紀夫と付き合う人って・・・どんな人?
さてさて、稀代の天才『三島由紀夫』の彼女ってどんな人・・・?
一言で言うならお姫様。
不景気な話ばっかりの昨今からは嘘くさいくらいのお金持ちです。お金持ち&教養&審美眼、ぜんぶ揃ったスーパーレデェ。
この女性のお金持ちっぷりがもう笑えるレベルなので、そちらも見所です。
切なすぎる!三島由紀夫のひたむきさ
そしてもうひとつ意外なのが、主役の三島由紀夫があまり裕福な身の上ではなかったというところ。
実家もあまり資産はなく、本人も人気作家とはいえ余るほどのお金はない。それでも、お姫様の気を引くために、高級レストランや旅行を必死で工面するさまがもう健気で健気で。
「金のない男は男じゃない」とか「なんで男ばっかりが女に貢がなきゃいけないの?」とか言い合っていがみ合っているのが恥ずかしくなります。
そんなに尽くしてもらえる方が幸せなのか、
そんなに尽くしたい相手を見つけた方が幸せなのか
どんな恋愛小説よりも胸に刺さった、ふたりの破局
そんな運命の恋人であるふたりも、結婚にはいたりませんでした。
付き合うときも何気なく、別れるときも何気ない大人の恋愛です。しかし破局後に一度だけ街でばったり会ったエピソードで、涙腺崩壊しました。
どんな恋愛小説もかなわないふたりの物語は、恋愛映画100本分に価すると断言します!
※ふたりの関係がモデルになっていると思えてしょうがない一冊。新興財閥の御曹司と、傾きかけた旧華族の令嬢の悲恋物語。
※なぜかあまり評価が高くない映画版。配役も美術も素晴らしくてわたしは大好きな一作です。
恋を失った三島由紀夫が死ぬまで
後編には元カノからバトンタッチして、彼の親友が破局から死までの経緯を教えてくれます。
昭和の大事件としてもはや伝説になりつつある、三島由紀夫切腹事件のあとさきを惜しみなく教えてくれる貴重な資料です。市ヶ谷事件に至るまでの彼の行動を知る手がかりなります。
岩下尚史「ヒタメン」読了。てか、ほぼ徹夜 w これだけ夢中で読みきってしまった本は久しぶり。面白かった!三島に関する評伝は山ほどあれど、ここまで親い人物たちへの緻密な聞き書きであれば十二分に信頼に足る。三島というのは思っていたより余程、好人物であり、そして生真面目に過ぎた。
— とんゆ (@viagrafica) 2013, 4月 30
※三島由紀夫が自殺の直前に書き終えたと言われている遺作
日本人が失ったものに気づかされる一冊
日本人が失ったものというと大変陳腐なんですが、この本から日本には美しいものが山ほどあると改めて感じました。
言葉遣いも景色も常に変わっていくものですが、文化そのものを愛する余裕がないのは悲しいことですね。着物ブーム、歌舞伎ブーム、落語ブーム、相撲ブームといま日本の文化が見直されていますが、やっぱりいまだに残っているものって面白いはず。
まだまだおおしろいものが、世界にはたくさんありそうです。